職人ご紹介

宮本博司

樽屋のDNA

 平成18年、それまで約30年間携わってきた川の仕事を辞め、京都に戻り家業である樽徳商店で働くようになりました。樽徳商店は明治5年創業の酒樽屋です。しかし、昭和40年代初め、加速する高度成長の流れの中、樽造りの職人さんの高齢化もあいまって、酒樽造りの幕を締め、以降ドラム缶、ポリ容器等の容器類やテープや緩衝材等の包装資材を取り扱ってきました。
 樽徳商店に入って1年ほど後、ふと木の桶・樽を造りたいと思いました。理屈はありません。私の中に刷り込まれた樽屋のDNAがそう思わせたのかもしれません。


54歳の手習い

製作風景

 桶造りの素晴らしい職人さんに出会いました。小さい頃からもの造りにあまり関心がなく、不器用な私に気長に根気よく桶造りを教えて下さいました。お蔭で、はじめはこの調子では死ぬまでに一つも桶が完成しないのではと思うほどでしたが、だんだんそれなりの桶・樽ができるようになりました。そして娘から「このごろお父さんの手の形が違ってきた」と言われる頃から、私の造った桶・樽を多くの方々に使っていただければと願うようになりました。


森に生かされる

 桶・樽には、吉野の杉、木曽の槇(マキ)、椹(サワラ)を使っています。木を削ると香りとともに美しい木肌が顕れてきます。削り方によって、様々な表情がでてきます。湿度によって深呼吸をするように延びたり、縮んだりします。桶・樽を造っていると、木は生き物なのだということを改めて実感することができ、癒されます。


「徳」を伝える

徳喜

 我が家の嫡男の名前には、代々「徳」の字がつけられてきました。ところが私の名前には「徳」がありません。今回、桶・樽を造るにあたり、「徳喜」を名乗らせていただきました。「徳喜」は、40代で早逝した祖父の名前です。ご先祖様たちから叱責されないよう精進してまいる所存です。


株式会社樽徳商店 宮本博司